会社の本店の住所をバーチャルオフィスに置けば、自宅を本店の住所にせずに、都心の住所で会社をつくれます。ただし、どのプランでも登記に使えるわけではなく、代表者の住所の扱いや、業種ごとの許可、解約のときの手続きなど、登記の前に知っておきたい点がいくつもあります。
この記事では、当サイトに載せている全国の運営会社の料金と規約(2026年10月4日に保存した各社の公式サイトの記載)の数字と、法令・役所の資料をもとに、登記の前に確かめたいことを順に見ていきます。月額は税込です。
バーチャルオフィスの住所で、会社の登記はできる
会社の本店をバーチャルオフィスの住所にして登記することはできます。運営会社の側も登記に使うことを前提にプランを用意していて、当サイトに店を載せている139社のうち129社に、法人登記に使えるバーチャルオフィスのプラン(オプションで使えるものを含む)がありました。
バーチャルオフィスで気をつけたいのは、同じ住所に多くの会社が登記していることです。商業登記法第27条は、同じ商号の会社が同じ所在場所ですでに登記されている場合について、次のように定めています。
商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。
つけたい商号と同じ商号の会社が、その住所ですでに登記されていないかは、商号を決める前に確かめておきます。商号を決めてからでは、定款や会社の印鑑を作り直すことになります。
代表取締役の住所は、登記簿に載る
本店をバーチャルオフィスにしても、株式会社の場合は、代表取締役の住所が登記簿に載ります。会社法第911条第3項第14号は、株式会社の設立の登記で登記する事項に「代表取締役の氏名及び住所」を挙げています。登記簿は誰でも取れるので、自宅の住所を知られたくない場合は、次の申出を考えます。
住所を行政区画までにする申出
商業登記規則第31条の3は、設立の登記などを申請する人が、登記事項証明書に代表取締役の住所の「行政区画以外のもの」を記載しない措置(代表取締役等住所非表示措置)を申し出られると定めています。
この申出では、上場していない株式会社は、本店がその場所に実在することを示す書面を付けます。条文では、次のどちらかです。
- 司法書士などの資格者代理人が登記を申請する場合に、その代理人が、本店がその所在場所に実在することを確かめた結果を書いた書面
- 会社を受取人とする書面が、本店の所在場所あてに配達証明郵便(またはそれに準ずる信書便)で送られたことを証する書面
このほか、市町村長などが作成した、代表取締役の氏名と住所が書かれた証明書と、実質的支配者の本人特定事項がわかる書面も付けます(それぞれ、付けなくてよい場合も条文で決められています)。
合同会社の場合
合同会社も、会社法第914条第7号で「合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所」を登記します。一方、商業登記規則第31条の3が住所を出さない申出の対象として挙げているのは、株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人で、合同会社の代表社員は挙がっていません。自宅の住所を出したくないことが会社の形を選ぶ理由になるなら、株式会社と合同会社のこの違いも比べておきます。
配達証明郵便を受け取れるバーチャルオフィスか
2つ目の方法を使うなら、バーチャルオフィスが配達証明郵便を受け取れることが前提になります。郵便の決まりを見ると、オフィスゼロワン・Busico.・GOODWORKの3社は、配達証明郵便を受け取らない郵便に挙げていました。書留そのものを受け取らないと書いている会社もあります(例:bizcubeは「書留や特別送達などの郵便物は受け取れない」)。一方、オフィスナビは、書留・配達証明など印鑑の要る受け取りを1件300円で受けています。
住所を出さない申出をするつもりなら、配達証明郵便を受け取れるか、受け取れない場合に司法書士などに頼む方法をとれるかを、契約の前に決めておきます。
許可や届出が要る業種は、事務所の要件を先に確かめる
会社の登記はできても、業種によっては、許可や免許を受けるときに事務所・営業所の実体を求められ、バーチャルオフィスの住所だけでは許可が取りにくいことがあります。所管の役所の資料から、主な業種の要件をまとめました。
| 業種 | 事務所・営業所について求められること | 資料 |
|---|---|---|
| 宅地建物取引業 | 継続的に営業の拠点となる施設としての実体。申請では事務所の外観・入口付近・内部の写真を出す | 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」 |
| 建設業 | 単なる登記上の本社・本店は、主たる営業所に当たらない。申請では営業所の外観・入口付近・内部の写真の提出か提示を求められる | 国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」 |
| 古物商 | 営業所は営業の本拠で、帳簿や商品を保管する事務所・店舗を含む。営業所ごとに常勤の管理者を置く(管理者が常にいない住所は営業所にしにくい) | 警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について」 |
| 有料職業紹介事業 | 個室やパーティションなどで、プライバシーを守って対応できる構造(代わりの方法あり) | 厚生労働省 大阪労働局「有料職業紹介事業の許可」 |
宅地建物取引業では、国土交通省の資料が、本店・支店の「事務所」を「商業登記簿等に登載されたもので、継続的に宅地建物取引業者の営業の拠点となる施設としての実体を有するもの」としています。建設業の許可事務ガイドラインも、主たる営業所について「名目上の本社、本店等であっても、その実態を有しないもの(単なる登記上の本社、本店等)はこれに該当しない」としています。どちらも申請で事務所・営業所の内部の写真を出すので、郵便を受け取るための住所だけでは足りません。
有料職業紹介事業は、構造の要件の代わりに、予約制や近くの貸部屋で他の人と同室にならない措置か、インターネットだけで対面しない紹介でもよいとされ、当分の間は事業所の面積がおおむね20㎡以上でもよいとされています。予約制などの措置やインターネットだけの紹介を選んだ場合は、その運営を守らないと許可の取消しの対象になる、という条件が付きます。
これらの業種で事業を始めるなら、許可を受ける事務所を別に用意するか、個室のあるレンタルオフィスなども比べます。要件は業種や地域で細かく違うため、手続きの前に、許可や免許を出す役所に確かめます。
運営会社の側でも、許可や届出が要る業種を契約できない業種に挙げていることがあります。規約で契約できない業種を挙げている60社のうち、古物・転売は11社、人材派遣・職業紹介は7社、探偵・興信所は6社が挙げていました。
登記できるプランを選ぶ
バーチャルオフィスのプランには、法人登記に使えるものと使えないものがあります。料金のあるプランを載せている132社について、いちばん安い月額のプランで登記できるかを見ると、次のとおりでした(会社設立の代行パックなど、ほかの契約が前提のプランは除いて数えています)。

| いちばん安い月額のプランで登記できるか | 会社の数 |
|---|---|
| 登記できる | 87社(66%) |
| 登記できない | 24社 |
| 条件付きでできる(オプションなど) | 11社 |
| 記載がない | 10社 |
いちばん安い月額のプランで登記できるのは3社に2社です。登記できないプランには、住所を名刺やネットショップの表示に使う人向けのもの(例:NAWABARIのネットショップ運営プラン)や、郵便を転送しないものがあり、月額が安く設定されています。

| 会社 | いちばん安いプラン(登記できない) | 登記できるプラン |
|---|---|---|
| GMOオフィスサポート | 転送なしプラン 660円 | 月1転送プラン 1,650円 |
| DMMバーチャルオフィス | ミニマムプラン 660円 | ベーシックプラン 2,530円 |
| THE HUB | 住所貸しプラン 550円 | 法人登記プラン 2,310円 |
いずれも1年契約の月あたりです。THE HUBは、このほかに年会費(住所貸しプラン11,000円、法人登記プラン22,000円)を毎年払います。広告の「月額◯◯円〜」は、登記できないプランの金額であることがあるので、登記に使うなら「登記できるプラン」の月額で比べます。登記できるプランの月額の相場や、地域ごとの違いはバーチャルオフィスの料金相場にまとめています。
登記をオプションにしている会社
「条件付き」の多くは、登記を追加料金のオプションにしている会社です。たとえばfabbitはバーチャルオフィスに月11,000円の住所登記オプション、bizcubeは月5,500円の法人登記オプション(ほかに登記保証金88,000円)、HYUGA BASEは月2,750円の法人登記オプションを付けると登記に使えます。いちばん安いプランが「条件付き」だった11社は、いずれもコワーキングスペースかレンタルオフィスを併設している会社でした。月額を比べるときは、会員の月額に登記オプションの月額を足した額で比べます。
支店の登記に使う場合
本店ではなく、支店の住所として登記に使う方法もあります。支店の登記にも使えると書いている会社は少なくとも11社あり、たとえばオフィスナビは「本店登記・支店登記のいずれにも対応」、fabbitは月11,000円の住所登記オプションで法人登記・支店登記などに使えるとしています。支店の登記について書いていない会社もあるので、その場合は申し込みの前に問い合わせます。
法人登記できる店だけを並べた一覧は法人登記できるバーチャルオフィスから見られます。
登記してよい日と、登記のあとに出すもの
申し込んですぐに登記してよいとは限りません。クロスコープは、契約書で決めた「利用開始日」以降に登記できるとしています。fabbitは、住所で登記するときは事前に申請し、書面で承諾を得ることにしています。OLUCKは、登記の申請の前に契約を済ませるよう求めています。会社をつくる日(登記の申請日)が決まっている場合は、利用開始日がその日に間に合うように申し込みます。審査の日数は、日数を書いている会社の多くが3営業日以内です(バーチャルオフィスの審査と本人確認)。
登記のあとに、登記事項証明書の写しを出す決まりの会社もあります。
- Karigo:新しく会社をつくって登記に使う場合は、登記が終わったあとに登記事項証明書(登記簿謄本)を出すと、郵便のサービスが始まる
- KOWAKURA:登記に使った場合は、登記のあとに登記事項証明書の写しを出す
- Co-nnect京都:会社をつくる前は個人で契約し、設立後に履歴事項全部証明書の原本を出して名義を変える
登記したあとの郵便
登記した会社名の郵便を受け取れるようにする
郵便を受け取る宛名を、契約のときに登録した名前に限っている会社があります。登記した会社名・屋号・代表者名のどれで郵便が届くかを考えて、宛名を登録しておきます。
- Karigo:登録した名称あての郵便だけを受け取り、登録のないものは差出人に返す
- レゾナンス:登録のない宛名は受け取らない。屋号の追加は月額のオプション(週1転送プランは1,650円、月1転送プランは990円)
- DMMバーチャルオフィス:屋号などの宛名は1つまで無料で、2〜3つ目はオプション(1件月1,650円)
宛名を登録していない郵便が差出人に返されると、役所や取引先からの書類が届かないまま、期限が過ぎることがあります。会社名のほかに屋号やサービス名で郵便を受けるなら、宛名をいくつ登録できるかと、追加の料金を比べます。
受け取れない郵便がある
郵便や荷物の決まりを載せている121社のうち38社は、内容証明郵便や裁判所からの特別送達などを、受け取れない郵便に挙げていました。たとえばGMOオフィスサポートは、特別送達などは受け取らずに不在票の写真で知らせ、レゾナンスは特殊取扱の郵便を差出人に返します。
受け取れない郵便が届いたとき、不在票の写真などで知らせてくれる会社なら、届いたことに気づけます。差出人に返す会社では、届いたこと自体がわかりません。契約の前に、受け取れない郵便が届いたときの扱いを見ておきます。
来店して受け取れる店
急ぎの書類は、来店して受け取れる店なら転送の日を待たずに受け取れます。掲載している711店のうち、その店で郵便を受け取れると書いている店は99店でした(ほかの店で受け取る決まりの店は除いています)。受け取りの曜日・時間や、予約が要るかは店によって違います。来店して受け取れる店は郵便物を窓口で受け取れるバーチャルオフィスから探せます。
解約のときは、先に本店の住所を移す
解約の決まりを載せている88社のうち、少なくとも29社は、解約の前に、登記の住所を別の場所に移すことを求めています。
- ワンストップビジネスセンター:住所変更の登記をしたあとの履歴事項全部証明書を出した時点で解約
- GMOオフィスサポート:契約が終わるまでに登記・ホームページ・名刺などから住所を消し、法人は住所変更後の履歴事項全部証明書を出す
- DMMバーチャルオフィス:すべての媒体から住所を消してから解約の申請をする
- fabbit:退去日までに本店の住所を変える登記を終え、1か月以内に移転後の登記事項証明書(登記簿謄本)を出す
本店の住所を移す登記には、登録免許税がかかります。国税庁の「No.7191 登録免許税の税額表」では、本店の移転の登記は「本店または支店の数1箇所につき3万円」です。法務局の管轄の外へ移すときは、移す前の登記所あてと移したあとの登記所あての申請書を1通ずつ(各3万円)出すため、合わせて6万円になります(法務局「株式会社(本店移転(管轄登記所外に移転する場合))」の記載例)。
運営会社を乗り換えるたびに、この登記と費用がかかります。料金の安さだけで選ぶと、あとで乗り換えたくなったときに数万円かかります。宛名を登録できる数と、受け取れない郵便の扱いのように、登記したあとに困る点を先に比べて選びます。
銀行口座をつくるとき
法人の口座を開くとき、銀行は犯罪収益移転防止法にもとづいて、(1)会社の名称と本店、(2)取引の目的、(3)事業の内容、(4)実質的支配者を確認します(金融庁「法人口座開設に係る取引時確認について」)。事業の内容は、定款や登記事項証明書などの書類のいずれかで確かめるとされています。
金融庁はこの文書で、法律で定める一定の場合には追加の確認が求められる一方、そうした事情がなければ、決められた書類のいずれかが確認できれば足りるとするなど、利用する人の利便にも配慮するよう銀行に求めています。確認する項目に、本店がバーチャルオフィスかどうかは入っていません。
申し込みでは、本店の住所で何の事業をしているかを説明できるようにしておきます。ホームページ、事業計画、取引先との契約書や見積書など、事業の内容がわかる資料をそろえておくと、追加の確認を求められたときに答えられます。
運営会社のなかには、銀行の紹介や、口座開設のための書類の発行をしているところもあります(掲載している会社のうち少なくとも10社)。たとえばGMOオフィスサポートとレゾナンスはプランに「銀行紹介」が含まれ、ツムグ前橋は法人口座開設の審査用に利用契約書の写しを発行しています。
税務署と社会保険の届出
会社をつくったら、税務署に「法人設立届出書」を出します。国税庁の案内では、提出時期は法人設立の日(設立登記の日)以後2か月以内、提出先は納税地の所轄税務署長です。法人税の納税地は「その本店又は主たる事務所の所在地」なので(法人税法第16条)、バーチャルオフィスで登記した場合は、バーチャルオフィスの住所を管轄する税務署に出します。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)に入る会社は、事実が生じてから5日以内に、事業主が「新規適用届」を出します。日本年金機構の案内には、「事業所の所在地が登記上の所在地等と異なる場合は『賃貸借契約書のコピー』など事業所所在地の確認できるものを別途添付してください」とあります。バーチャルオフィスで登記して、実際には自宅や別の事務所で働く場合は、その場所を確かめられる書類を用意します。
登記するまでの流れ

- 同じ住所に同じ商号の会社がないかを確かめてから、商号を決める
- バーチャルオフィスに申し込み、審査を受ける。これから登記に使うことを伝える
- 契約し、登記してよい日(利用開始日)と、郵便の宛名を確かめる
- 本店の住所をバーチャルオフィスの住所にして登記を申請する。代表取締役の住所を出さない申出をするなら、このときに一緒に申し出る
- 登記のあと、求められている会社には登記事項証明書の写しを出す
- 設立登記の日以後2か月以内に、税務署へ法人設立届出書を出す
- 銀行口座を申し込む
よくある質問
同じ住所に、ほかの会社が登記していても大丈夫ですか?
商業登記法第27条が登記できないとしているのは、すでに登記されている会社と商号が同じで、本店の所在場所も同じ場合です。同じ住所にほかの会社があるかどうかより、同じ商号の会社がないかを確かめます。
許可が要る業種でも、本店だけをバーチャルオフィスに置けますか?
業種によります。たとえば建設業の許可事務ガイドラインは、「単なる登記上の本社、本店等」は主たる営業所に当たらないとしているので、許可を受ける営業所は別に要ります。本店の登記と、許可を受ける営業所の扱いは業種ごとに違うので、許可を出す役所に先に確かめます。
会社をつくる前に申し込めますか?
申し込める会社があります。法人をつくる前に要る書類を案内している会社(例:DISCOVERY coworking)や、個人で契約して設立後に会社の名義に切り替える会社(例:Co-nnect京都)があります。申し込みのときに「これから登記に使う」ことを伝えて、手順を確かめます。
バーチャルオフィスをやめるときは、何をすればよいですか?
本店の住所を移す登記をして、移したあとの登記事項証明書を運営会社に出す決まりの会社があります。ホームページや名刺の住所も書き換えます。登録免許税は本店の移転1か所につき3万円、法務局の管轄の外へ移すときは合わせて6万円です。
まとめ
- 店を載せている139社のうち129社に、登記できるバーチャルオフィスのプランがある
- 同じ住所に同じ商号の会社がないかを、商号を決める前に確かめる
- 株式会社も合同会社も、代表者の住所が登記簿に載る
- 株式会社は代表取締役の住所を出さない申出ができ、本店の実在を示す書面(配達証明郵便で送った証明など)を付ける
- 配達証明郵便を受け取らないバーチャルオフィスがある
- いちばん安い月額のプランで登記できるのは、3社に2社(87社)
- 宛名を登録した郵便しか受け取らない会社がある
- 特別送達や内容証明を受け取らない会社が38社ある
- 本店の移転の登録免許税は3万円で、法務局の管轄の外なら6万円
- 宅建業・建設業などは、許可を受ける事務所・営業所の実体が要る
- 法人設立届出書は、設立登記の日以後2か月以内に本店の住所の税務署へ出す
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