即日から使えるとうたうバーチャルオフィスもありますが、郵便物を受け取るサービスのあるバーチャルオフィスでは、申し込みのあとに本人確認があります。書類や事業の内容によっては、契約を断られることもあります。
用意する書類と、断られたときに直せることを中心に見ていきます。会社ごとの決まりは、当サイトに載せている運営会社の規約・よくある質問の記載(2026年10月4日に保存した各社の公式サイト)から数えています。
バーチャルオフィスの申し込みに審査がある理由
バーチャルオフィスの運営会社は、犯罪収益移転防止法(犯収法)の「特定事業者」に当たります。同法第2条第2項第44号は、自分の事務所の所在地を、顧客が郵便物を受け取る場所として使うことを許し、届いた郵便物を顧客に引き渡す業務を行う者を挙げています。同じ号には、電話番号を貸して、かかってきた電話の内容を伝える業務(電話受付代行)や、電話を顧客の指定する番号に自動で転送する業務も含まれます。
警察庁の犯罪収益対策室(JAFIC)がまとめた「犯罪収益移転防止法の概要」は、郵便物を受け取るサービスについて、次のように書いています。
実際に、架空名義で契約した郵便物受取サービス業者宛てに犯罪収益を送付させ、これを隠匿した事例があること等から、郵便物受取サービスは、マネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められます。
このため、バーチャルオフィスの契約では、法律で決められた確認(取引時確認)が義務になっています。そのうえで、運営会社はそれぞれの基準で審査をしていて、その基準は会社ごとに違います。
契約のときに確かめられること
法律で確かめることになっているのは、次の4つです(犯収法第4条第1項)。
| 確かめること | 個人で申し込む場合 | 法人で申し込む場合 |
|---|---|---|
| 本人特定事項 | 氏名・住居・生年月日 | 名称・本店または主たる事務所の所在地 |
| 取引を行う目的 | 申告する | 申告する |
| 職業・事業の内容 | 職業を申告する | 事業の内容を、登記事項証明書や定款などの書類で確かめる |
| 実質的支配者 | — | 事業経営を実質的に支配する人の本人特定事項を、代表者などが申告する |
JAFICの資料では、取引を行う目的は「顧客等又はその代表者等から申告を受ける方法」とされ、口頭で確かめるほか、運営会社が作ったチェックリストに記入してもらう方法もあるとしています。申し込みのフォームで、利用の目的や事業の内容を選んだり書いたりするのはこのためです。
JAFICの資料は、申し込む人が確認に応じないときは、運営会社は応じるまでの間、取引の義務の履行を拒むことができるとしています。書類を出さない、目的を答えないといった場合は、各社の審査より前に、法律の確認の段階で契約に進めません。
申し込みに必要な書類

必要な書類を載せている97社で、挙げている会社が多い書類は次のとおりです。1社で複数を挙げているものは、それぞれに数えました。法人用と個人用の書類をまとめて数えているので、個人で申し込む人は、登記簿を除いた行が目安になります。
| 書類 | 挙げている会社の数 |
|---|---|
| 登記簿(履歴事項全部証明書) | 77社 |
| 運転免許証(「免許証」と書くものを含む) | 63社 |
| 住民票 | 38社 |
| マイナンバーカード | 35社 |
| 印鑑証明書 | 31社 |
| パスポート | 30社 |
| 健康保険証 | 20社 |
| 在留カード | 17社 |
個人で申し込むとき
法律の本人確認に使える書類は、JAFICの資料で次のように整理されています。
- 顔写真のある書類:運転免許証、運転経歴証明書、在留カード・特別永住者証明書・マイナンバーカード等のうち顔写真のあるもの、旅券(パスポート)など
- 顔写真のない書類:顔写真のない在留カード・マイナンバーカード、資格確認書等、国民年金手帳、母子健康手帳、印鑑登録証明書、住民票の写しなど。ほかの書類や、書類の住所あてに郵便を送る方法と組み合わせて使う
- 有効期限のある書類は、提示・送付の日に有効であること。有効期限のない書類(住民票の写しなど)は、原則として提示・送付の日の前6か月以内に作られたもの
上の表では20社が健康保険証を挙げていますが、JAFICの資料の一覧には健康保険証はなく、「資格確認書等」が挙がっています。健康保険証を挙げている会社に申し込む場合も、運転免許証やマイナンバーカードなど、一覧にある顔写真のある書類を用意しておくと、書類の出し直しになりにくくなります。
「現住所」が書かれた書類と明記している会社が15社ありました。たとえばPocket Officeは「現住所が記載された顔写真付きの本人確認書類1点」、V.OFFICE23は2つの書類の住所が同じであることを求め、現住所と違う場合は補う書類が要るとしています。引っ越したあとに免許証の住所を書き換えていない場合は、先に書き換えておきます。
法人で申し込むとき
法人の場合は、会社の登記簿(履歴事項全部証明書)を挙げる会社が77社で最も多く、法律の本人確認でも、法人の書類は登記事項証明書と印鑑登録証明書などとされています(JAFIC)。あわせて、申し込む人の本人確認書類も求める会社が多く、たとえばレゾナンスは、発行から6か月以内の登記簿謄本と、現住所が書かれた顔写真付きの身分証明書です。
法人は、会社の事業経営を実質的に支配している人(実質的支配者)が誰かも確かめられます。JAFICの資料では、通常は代表者などから申告を受ける方法とされているので、株主や出資者の構成を、申し込む前にまとめておきます。
これから会社をつくる人は、まだ登記事項証明書を出せません。その場合は個人として本人確認書類で申し込み、設立後に会社の名義に切り替える会社があります(例:Co-nnect京都は、設立後に履歴事項全部証明書の原本を出して名義を変える)。登記に使う場合の手順はバーチャルオフィスで法人登記するときに確かめることで扱っています。
事業の内容がわかる資料
書類のほかに、事業の内容がわかる資料を求める会社もあります。
- 京都バーチャルオフィス:審査で最も重要なのは事業内容が確認できることとしている
- バーチャルオフィス1:事業概要を説明する書類の提出が必須
- ビステーション:会社概要やホームページなど、事業内容のわかるもの
- bizcube:事業概要書・事業計画書
- Co-nnect京都:事業計画書や会社案内など。ホームページがあればサービス内容と会社概要の部分を印刷したもの。どれもなければA4で1枚ほどの資料(定款の業務内容だけでは不可)
ホームページがあればそのURL、まだなければ、扱う商品やサービス・取引先・売り方をA4で1枚ほどにまとめた資料を用意しておくと、追加の質問に答えやすくなります。
本人確認の方法:郵便・オンライン・面談
法律で決められた本人確認の方法は、対面と、オンライン・郵送の非対面に分かれます(犯罪収益移転防止法施行規則第6条)。対面では、顔写真のある本人確認書類の原本を見せるのが基本です。非対面では、専用のソフトで顔の画像と本人確認書類の画像やICチップの情報を送る方法(eKYC)、書類の住所あてに転送されない書留郵便などを送る方法、本人限定受取郵便を使う方法、電子証明書を使う方法などがあります。
審査の方法や書類を載せている113社の記載では、次の3つに分かれます。
| 方法 | 書いている会社 | 例 |
|---|---|---|
| 郵便で住所を確かめる | 12社以上 | Karigoは転送不要書留、NAWABARIは本人限定受取郵便で届く確認番号 |
| オンライン(eKYC) | 7社 | レゾナンス・バーチャルオフィス1・GMOオフィスサポートなど |
| 面談 | — | ビジネスリンクス ナゴヤは必ず来店して面談、Sapporo Nestは対面かオンラインで面談 |
郵便で確かめる会社には、書留などを受け取って確認が済んでから利用が始まるところがあります。申し込んだあとに不在票が入ったら、早めに受け取ります。
2027年4月から、本人確認の方法が変わる
本人確認の方法は、2027年4月1日から変わります。国土交通省の資料「不動産業におけるマネーロンダリング対策の徹底について」は、警察庁が施行規則を改正したことを次のように説明しています。
令和9年4月1日より、ICチップ情報が格納されている本人確認書類について、券面の記載事項等の確認だけではなく、ICチップ情報が表示されるか、券面の記載事項と一致しているかなど、ICチップ情報の読み取りを行うことが義務付けられました。
ICチップのある書類を受けるときは、対面で見せる場合のほか、本人限定受取郵便でも配達する人がICチップを読み取る形になります。同じ資料の図では、2027年4月1日で廃止される方法も示されています。前の節の3つの方法に当てはめると、次のようになります。
- オンライン(eKYC):顔と書類の画像を送る方法は廃止。顔の画像とICチップの情報を送る方法は残る
- 郵便:書類の写しと転送されない書留を組み合わせる方法は廃止。本人限定受取郵便は、配達する人がICチップのある写真付きの書類を確かめ、ICチップを読み取る形に変わる
- 面談(対面):ICチップのある写真付きの書類なら、見せたうえでICチップを読み取る。顔写真のない書類を2つ見せる方法などは廃止
マイナンバーカードの電子証明書を使う方法も残ります。2026年10月の今申し込む場合は、これまでの方法で確認が進みます。2027年4月以降に申し込む場合は、ICチップの付いた写真付きの本人確認書類を用意しておくと、確認の方法を選びやすくなります。すでに契約している人に確認のやり直しがあるかは、この資料には書かれていません。
審査にかかる日数

審査の日数を書いている37社のうち、28社が「3営業日以内」でした。4〜5営業日が4社、それより長い(「1週間」「7営業日」など)のが5社です。
ここでいう日数は、書類がそろってから審査の結果が出るまでの日数です。このあとに郵便での本人確認や、初期費用の支払いが続く会社もあります。たとえばKarigoは、審査は1〜2営業日、利用開始までは4〜8営業日としています。使い始めたい日が決まっているなら、審査の日数に郵便の日数を足して、2週間ほど前には申し込みます。法人登記に使う場合は、登記してよい日(利用開始日)の決まりもあわせて確かめます。
契約を断られやすい業種

規約やよくある質問で、契約できない業種を挙げている会社は60社ありました。挙げている会社が多いのは次の業種です。
| 業種・活動 | 挙げている会社の数 |
|---|---|
| アダルト・風俗 | 42社 |
| 宗教・政治の活動 | 40社 |
| 出会い系 | 34社 |
| マルチ商法・MLM | 34社 |
| ギャンブル | 33社 |
| 投資・融資などの金融 | 22社 |
| 情報商材 | 15社 |
| 古物・転売 | 11社 |
| 人材派遣・職業紹介 | 7社 |
| 探偵・興信所 | 6社 |
このほか、60社のうち43社が、反社会的勢力との関係がある人や会社を断ると書いています。
上位の5つ(アダルト・風俗、宗教・政治の活動、出会い系、マルチ商法、ギャンブル)は、半分以上の会社が挙げています。一方、金融・情報商材・古物などは、挙げていない会社のほうが多い業種です。こうした業種で断られた場合は、ほかの会社の規約の「契約できない業種」を読んで申し込み先を選び直せます。
申し込める人の条件:年齢・住まい・国籍
書類や業種のほかに、申し込める人の条件を決めている会社もあります。
年齢
未成年者の申し込みについて書いている会社は19社ありました。NAWABARIやCo-nnect京都のように18歳未満は申し込めない会社のほか、BAレンタルオフィスのように未成年者は親権者が契約する会社もあります。
海外に住んでいる場合
海外に住んでいる人の申し込みについて書いている会社は9社で、扱いが分かれます。
- DMMバーチャルオフィス・Pocket Office・R-INNOVATION:日本国内に住んでいることが条件
- レゾナンス・METSバーチャルオフィス:日本に住む代理人が要る
- サテライト沖縄:海外に住んでいても利用できる(郵便の転送は相談)
外国籍の場合
外国籍の人は、在留資格や日本語でのやりとりを条件にしている会社があります。たとえばMETSバーチャルオフィスは日本に住み日本語で対応できれば申し込め、オフィスゼロワンは在留カードを本人確認書類にする場合は永住者に限っています。GMOオフィスサポートは、登録を断る例に「日本の国籍を有しない、かつ、永住者又は特別永住者の在留資格を有しない場合」を挙げています。在留資格によって申し込める会社が変わるので、在留カードの在留資格の欄を見てから申し込み先を選びます。
審査の結果と、断られた理由
審査で断られたとき、その理由を教えてもらえるとは限りません。審査の方法や書類を載せている113社のうち18社は、審査の基準や理由を開示しないと書いています(例:GMOオフィスサポート・BIZcomfort・FREENANCE)。理由を聞けない場合は、次の節の順に、自分で直せるところから見直します。
審査に通らないときの見直し方
- 書類の住所・氏名が、申し込みの内容と一致しているか(引っ越しのあとの住所変更、旧姓など)
- 書類の有効期限と発行日の決まりを守っているか(法律では、有効期限のない書類は原則6か月以内。会社によっては、たとえばBIZcomfortの登記事項証明書の写しのように「3か月以内発行」と短く決めている)
- 事業の内容が、扱う商品・サービス、売り方、ホームページまで具体的に書けているか
- 事業が、その会社の「契約できない業種」に当たっていないか
- 許可や届出が要る事業で、バーチャルオフィスの住所が使えるか
- 年齢・住まい・国籍の条件に当てはまっているか
1〜3を直せるなら、直してから同じ会社に申し込みます。4〜6に当たる場合は、その条件を挙げていない会社を探します。契約できない業種や申し込める人の条件は、会社の規約・よくある質問に書かれていることが多いので、申し込む前に読んでおきます。
申し込みから利用開始までの流れ
- 公式サイトから申し込む。プランのほか、利用の目的と事業の内容を入力する
- 本人確認書類や登記簿などを出す
- 審査を受ける(日数を書いている会社では3営業日以内が多い)
- 郵便・オンライン(eKYC)・面談のいずれかで本人確認をする
- 契約を結び、初期費用を払う
- 住所の利用と郵便の受け取りが始まる
よくある質問
審査なしで使えるバーチャルオフィスはありますか?
郵便物を受け取るサービスや電話のサービスがあるプランでは、法律で本人確認が義務なので、本人確認なしでは使えません。各社の審査もそのうえで行われます。審査を載せている会社のうち、日数を書いている37社の多くは3営業日以内です。
個人事業主や、これから起業する人でも申し込めますか?
申し込めます。事業の実績がなくても申し込めると書いている会社もあります(例:METSバーチャルオフィス、ダイバース)。まだ売上がなくても、何をどう売るかを具体的に書きます。
本人確認の書類は、写しやスマートフォンで撮った画像でもいいですか?
2026年10月の今は、写しや画像を送る方法も使えます。ただし、画像だけで済むのではなく、顔の画像を一緒に送る方法(eKYC)や、書類の住所あてに送られる転送されない書留を受け取る方法と組み合わせます。2027年4月1日からは、顔と書類の画像を送る方法や、写しと書留を組み合わせる方法は廃止されると、国土交通省の資料は示しています。
家族や会社の担当者が、代わりに申し込めますか?
個人の契約は、本人が申し込むことにしている会社があります。たとえばDMMバーチャルオフィスとPocket Officeは、個人の代理の申し込みを受け付けていません。法人の場合は、DMMバーチャルオフィスやMETSバーチャルオフィスのように、委任状があれば担当者が手続きできる会社があります。
審査に落ちたら、もう契約できませんか?
ほかの会社なら契約できることがあります。契約できない業種や、年齢・住まいの条件は会社ごとに違います。書類の不備や住所の食い違いが理由になりそうなら、それを直してから申し込みます。
まとめ
- バーチャルオフィスの運営会社は犯罪収益移転防止法の特定事業者で、本人確認が義務
- 法人は登記事項証明書と申し込む人の本人確認書類を出す
- 個人は運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真のある書類を用意する
- 書類の住所は、申し込みの住所とそろえておく
- 起業前の人は、個人で申し込み、設立後に名義を切り替える方法がある
- 2027年4月1日から、画像を送るeKYCなどの本人確認の方法が廃止される
- 審査の日数は、3営業日以内の会社が多い
- 金融・古物などは、断る会社と断らない会社がある
- 断られたら、書類・住所・事業の説明を直してから申し込み直す
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